「はい、イイモノ♪」

 

「モモンガなんぞ2匹もいらんワイ」

 

校長の手にはモモンガが

 

流石に二匹もいらない

 

二機というべきなのだろうか?

 

「自分をソンナンと一緒にせんといてや!」

 

「ののの!」

 

なぜ『ののの!』?

 

と、自分に心の中でつっこみを入れる

 

って、こっちのモモンガしゃべった!?

 

「すごいすごい!!この子しゃべった!!」

 

「ああ・・・・・って、何で校長が驚くんだ!!」

 

一応言っておくが、今驚いたのは鈴ではなく校長だ

 

持ってきた張本人だろ!!

 

「あのね、しゃべるとは聞いてたんだけど、

わたしの前では一度もしゃべらなかったんだよ」

 

「何で凡人の前でしゃべらなあかんのじゃ!」

 

うわ〜、このモモンガ性格悪い・・・・・

 

ん?待てよ?ってことは・・・・・

 

「オレの前でしゃべっても良いのか?」

 

「ん?何や、まさか知らんのかいな」

 

「なにを?」

 

「何をって・・・・・」

 

モモンガはそこでしゃべるのを止めた

 

いや、いきずまった

 

「何でもない・・・・・とにかく自分、このアカメガの家に住むで」

 

そう言うと、モモンガは校長の手からオレの肩に飛んできた

 

アカメガとは『赤いメガネ』の略だろう

 

「何でコイツはこんな中途半端な関西弁なんだ?」

 

「そんな風にインプットされてるんじゃない?」

 

オレの問いに答えてくれる校長

 

わざわざ中途半端にすること無いじゃん

 

「いいな〜、カイっちだけいっぱいイイモノもらって」

 

後ろからの鈴の声

 

「オマエは敗者だ」

 

「うぅ」

 

勝ち

 

なんだか気分がいい

 

「あ、もう7時だ」

 

校長の声、うで時計を見ると確かに

 

6時55分だった

 

「オレそろそろ帰るわ」

 

「じゃあ、あたしも」

 

「うん、こっちに抜け道があるの、着いてきて」

 

校長が本だなを動かすと『ゴゴゴゴゴゴゴ』と言う

 

効果音とともに、抜け道が出てきた

 

ホントにゲームみたいに

 

 

 

○            ×             □

 

 

 

前の方で校長と鈴が話しに熱中し、

 

モモンガ1(しゃべらない方)が、肩で寝ている

 

オレはポケットから携帯電話はを取り出し

 

決してオレからは電話を掛けないだろうと思っていた相手に電話をした

 

「だれに電話しとるん?」

 

モモンガ2(しゃべる方)が頭の上から問いかけてくる

 

「静かに・・・」

 

それだけしか返さない

 

RRRRRRRRRRRRRRRRRRR

 

『もしもし』

 

出た

 

「もしもし、オレだ」

 

『!!、カイトか!?』

 

あっちはかなり驚いている

 

オレから電話がかかってくるとは思ってなかったのだろう

 

「ああ、オレだ」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

沈黙

 

話すタイミングが分からない

 

しばらくして、あっちが口を開いた

 

『・・・・・・・すまない・・・・・』

 

その言葉を聞いてすこし頭にきた

 

「もういいって言ってるだろ!!!何度言わせるんだ!!」

 

思いっきり怒鳴ってしまった、前の二人が驚いてこっちを見ている

 

しまった!と思い声を縮める

 

「怒鳴っちまって悪い・・・」

 

『いや・・・・・』

 

オレの電話の相手は・・・・・親父だ・・・・・・

 

オレは身分上虐待に近い教育を受けていた

 

それを怖がって母さんは由紀を連れて家を飛び出した

 

あの時思った、なぜオレを連れていってくれなかったのだろうか?

 

あの時はずっと恨んでいたが、今はもうどうでも良くなった

 

3才で中学一年、7才で東大も楽々合格できる頭脳を身につけた

 

実際、10才のころアメリカの超一級大学を首席で卒業している

 

オレは料理も、知能も、運動神経も、何もかも偽って生きているのだ

 

教育が終わったのは姉が死んでからだ、あの時は自分がした酷い教育をくやんで

 

何度も何度もオレに謝ってきた

 

「聞きたいことがある」

 

『何でも答える』

 

「オレの消された記憶についてだ」

 

『!!・・・・・』

 

電話越しにも動揺しているのが分かる

 

オレの記憶の一部は『消されて』いる、

 

身分上オレは命を何度もねらわれている、

 

小さい時には、『人が死ぬところの場面を消した』で、納得できた

 

だが、中学3年生のころの一時期の場面が全く思い出せない

 

五才のころから人が死ぬ場面なんて何度も見ている

 

なのにだ、なんで中三の記憶を消さなければならないのかが分からない

 

しかも覚えているのは、大けがをして病院のベットで寝ているところだ

 

その時、絶対におかしいと親父を問い詰めたら『何時か話す』で終わらせられた

 

「なぁ、オレの何を消した?」

 

『・・・・・・・・・・コレを聞いたら、自由に生きられなくなるかも知れない・・・・・・』

 

「・・・・・・・・・ココはまずい、あとで家に帰ったら掛け直す」

 

『ああ』

 

プツン

 

電話を切りポケットに納める

 

・・・・・・・・・・何となく分かってきているのだ

 

『亜鬼』一族のことを、だが分かりたくない、知りたくないのだ

 

『亜鬼』それは親父の家の方の名字

 

『水野』は、今のお袋の方の名字だ

 

親父の家は代々一番上の子供は何処かが悪い

 

婆ちゃんは、体全体が弱く親父を産んですぐに死に至った

 

親父は左目が見えない、そしてオレは肺が弱い

 

だがその代わり、人とは懸け離れた頭脳や運動能力を持っている

 

オレは何度も何度も銃弾をくらっているが死んでいない

 

それどころか、傷口だって一周間すれば完全にふさがる

 

人と違うことが恐い、だから自分を偽る

 

だが、やはり知っていないとまずいことがあるだろう

 

きっとモモンガ2(しゃべる方)が言ったのは

 

オレの消された記憶に関わっている、

 

だが、知ってしまったらどうなるのだろう?

 

・・・・・・いや、どうにもならない、

 

そう信じよう・・・・・・・