「さてと、行くか」
「は?」
不意につぶやいたことにモモンガ2が答える、答えると言うより反応する
「実家に帰る」
「訳分からん」
「実家に帰るんだよ、あ、日本のな」
「他国にも在るんかい」
確かに他国にも家はある、だがオレの実家は日本だけと決めつけている
黒いコートを着て黒いサングラスを赤いメガネの上にかける
「なんや?銀行強盗でもするんか?」
「変装だ」
白いマスクと黒いぼうしをかぶる、ズボンも黒だ
「お前も来るか?」
モモンガ1に聞いてみる、
すると肩の上に乗った、恐らく『行く』という意味だろう
「さてと、しゅっぱーつ♪」
「おい、マテヤ」
勢い良く飛び出そうとしたらだれかに止められた
後ろを振り向くがだれもいない
「ダレモイナイ」
「ココにおる」
テーブルの上のリスの置物がしゃべった
コレは夢だと決めつけながら外に出る
「マタンカイゴラァ」
やはり声がする、振り向くとリスの置物がこちらに飛んでくる途中だった
『ガン』
「ゴフッ!」
そのリスの置物がオレの顔にパンチをした
いつも柔らかいので油断していたが、殴るときはこぶしが固くなるらしい
「は〜、スッキリしたわ」
モモンガはそのまま頭の上に乗り、パンパンオレの頭をたたく
「ほな行こか」
「・・・」
右のほおをおさえながら外に出る
絶対に何かの仕返しをしなくちゃな・・・
何て事を考えているが、最も効果的な言葉を知っている
「きっとアザになるだろうな、病院に行かなくちゃな
その病院代はきっと、いや、100%お前の果物代だな」
そんなことをモモンガ2に聞こえるようにつぶやく
コレが最も効果的な言葉なのだ
するとモモンガ2は慌てて
「そんな!冗談やろ!?」
と、頭の上で飛びはねる
足が柔らかいので痛くない
「コレが冗談に聞こえるんだったらお前は機械だな」
機械なんだがな・・・
心の中で自分に突っ込む寂しいオレ
そのままマンションを出る、
その間、頭の上でモモンガ2がずっと放心状態だった
× ○ □
おかしい、今は駅に向かう途中なのだが周りからの視線が痛い
なんだ?KTKのやつらか?
視線のする方を見てみるとみんな目線を逸らす
オカシイ、絶対にオカシイ・・・・・
な〜んてな、この格好がまずかったのだろう
全身黒尽くめ何て珍しい格好で来たのが間違いだった
確かにダレだかは分からないが、余計目立つ
しかも頭と肩にモモンガが乗っているんだ、あやしすぎる
「おい、降りろ」
「・・・・・」
頭に乗っているモモンガ2はまだ放心状態らしい
モモンガ1は動く気無し
仕方なく自分でモモンガ2と1をつかみ、右のポケットに押し込む
その時モモンガ2から何の抵抗もなかったという事実がコイツの精神状態を表している
仕方ないからあとでリンゴでも買ってやるか
周りの視線に耐えつつ警察が来ないことを祈る(銃を持っているから
駅に着いた
ここからは新幹線だ、予(あらかじ)め買っておいてもらった(ブラックレッドに)
キップを使って新幹線に乗りこむ
その時警備員に引き止められなかったので助かった
○ × □
「何てこった・・・」
新幹線が発車した今きずいた、
この新幹線全体貸し切り!?
そして今思い出した、ブラックレッドにどういう風に頼んだか、たしか・・・
『家に置いたままの物を取りに帰りたいから新幹線用意しといて、あ、他のみんなには内緒な』
だったような気がする
『新幹線用意しといて』って言ったオレがバカなのか?
普通にキップ用意しといてもらえればそれで良かったのに・・・
だから警備員に止められなかったんだなと今ごろ思う
それよりポケットに入っている本当にリスの置物になりかけの機械を取り出す
「おい、生きてるか?」
「・・・・・・・」
オレの手の平の上で立ったまま動かない
いつもよく動く物が動かないのはやはり不気味だ
仕方なく奥の手に出る、ポケットからフルーツキャンディーを取り出し
モモンガ2の目の前にぶらつかせる
「おーい、コレがなんだか分かるかな〜」
「・・・!!」
それを見るとイキナリ飛びついてその袋のままかじり付いた
「おい、そのまま食うな」
「うっさいわ!だまっとき!」
うわ、もうちょっと黙らせときゃ良かった
フルーツキャンディーをかじりつく姿はドングリを割るリスに見える
もう片方にもあげておく、自分はコーヒーキャンディーを口に入れる
コーヒーの苦みがほのかにする、
新幹線の外を眺めながら意識が途絶えた