〜カイン〜
ミルフィーユは俺に旅についてきて欲しいと言った
どうする?
俺がついていったら何か可笑しなことにならないか・・・
簡単に言うとゴング達に狙われないかだ
あいつらは魔剣を手に入れるために俺を殺したがるだろう
封印されている魔剣は別に魔王でなくても魔王の血を引く者だったら
だれでも装備できるらしい。扱えるかどうかは別にして
でも魔王しか持てない力、不老、威厳、魔族の信頼、財産、部下達などたくさんある
そのために俺を狙ってくる可能性は87%より高い
――西大陸のケルルマフの街に行くんじゃ
ケルルマフ・・・・・確か何の特徴もないキャラバンの休憩所
宿屋、酒場、道具屋、防具屋、武器屋、教会など一通り店等はそろっている
・・・・・って、今のはさっきの爺声
あんた死ねや、モロに落ちただろうが
――ほっほっほ
心との直接な会話は考えている事を本人の意思無しで勝手に読み取られる
だから好きじゃないんだけどな
兎に角爺が言う通りその街に向かうか?
爺が敵だとは考えにくい、でも味方かは分らない
――行って見なされ
・・・・・・・・・・はぁ、仕方ないな、まず爺の言う通りケルルマフに向かう
ここで起きる問題がどうミルフィーユの問いに断るかだ
俺が狙われているかもしれないと言うこと以前に
ミルフィーユは勇者、俺は魔王と言う存在
一緒に居るのも不自然
それに俺が魔王なら何時かは戦わなくてはならない
戦いにくくなるどころが停戦になんてなったら俺が死ねない
勇者に殺されるんだったら本望だし、これからの不老の人生も無くなってくれる
俺だけ残して時が流れていく恐怖から抜け出せるんだ
運命が存在するなら俺はどうする?
そう、人生なんて所詮は全部運命
なにがあろうとそれは全部決められた運命だから
「運命を信じて見ないか?」
そう言った
本当に出会うことがあればついて行くつもりだ
ミルフィーユも最初は反対気味だったがどうにかOKに持ち込んだ
旅にいざ出ようとするとミルフィーユに止められた
確かにこの暗いなか外に出ようと、しかも窓から出ようとするのは異常だ
でも早くいかなけばいけない
なぜか早く行かないといけないような気がする
ミルフィーユは何かを思いついたような顔をして
「ちょっと待っててください」
走って何処かへ行ってしまった
俺は窓の前に立って魔剣をサヤから半分抜いた
・・・・・・・・・・こいつをどうするか
この魔剣は特にすごい効果などはない
だが危ないのは事実
何処かに隠す事もできるが俺が持っているほうが安全だろう
・・・・・・でも
これから人間の土地を歩くのであれば魔剣を持っているといろいろ厄介だ
魔剣と魔剣のサヤは見ただけで魔剣だと分かる
ただ今は魔剣のサヤの上にサヤを、二重サヤをしているから分らないだろうが・・・
人間の国に居る以上何時、何処で何をされるか分からない
そうなると俺が魔王、よくて魔族だとばれてしまう
今のうちに処分しておくべきなのだろうか?
此処で視線に気づく
見るとミルフィーユが手にバックを持って息荒くドアの前に立っていた
まずい、魔剣を見られただろうか?
慌てて魔剣を収めて、ミルフィーユの前に行く
バックを俺の前に突き出し
「五日分の食料と医療道具です」
と言う、まだ少し息が荒いところから考えてこの子は走っていたのだろう
なんて奴、此処まで心配されているんだな
・・・・・・・・・・でも結局は魔王と勇者
仲良くなったところで最期は悲惨な運命
それでも今が楽しいなら・・・・・・今はまだこれでいい
「ありがとう」
いつも通りの礼だったが、何だか自分でも不思議なほど穏やかだった
窓から飛び降りる寸前思った。
何か約束をしていれば運命の絆が強まるかもしれない
そんなありもしない事を考えてしまい、結局見つけ出した言葉は
「あぁ、そういやお礼言ってもらってなかったな。
今度でいいや、ちゃんとご褒美も頂きますから」
と言う、少し意地悪な言葉だった