城を包囲されてから７日、やはり国民は多い

城の中もパンパンだ

泣いている子供、傷を負った騎士、放心状態の大人、この期に及んでナンパ、

一番やっかいなのは空腹でのいらだち

なるべく人が居ないところに移動

理由は荷物を奪われたら困るからだ

人が居ない廊下にすわりこむ

「お兄ちゃんお腹へったーー！」

「我慢して、みんな同じなんだから」

こちらに歩いてくる子供たち、

妹だと思われる７才くらいの少女、お兄ちゃんと言われた１０才くらいの少年

親とはぐれたのだろうか？

それとも・・・・・考えたくないな

そう言えばここに入ってから食事はカンパンしか配られていない

「ほら、こっち来い」

子供たちを手招きする

「な〜に？」

少女は興味津々だ、少年の方は不安げな顔をしている

破けそうなほどパンパンな袋から果物を二つ取り出し

兄妹に配ってやる

「わぁ〜、ありがとう！」

「あ、ありがとうございます！」

満面の笑みの二人

なんだかこっちまでうれしくなる

「ココに座って食べな、人に見つかると奪われるよ」

そう言うと二人ともうなずいてオレのとなりに座る

一気に食いつく姿から相当腹が減っているのだろう

コレは人間の国の『リンゴ』と言うらしい

「その袋の中は全部食料ですか？」

兄がりんごを食いながら聞いてくる

「ああ、遠くの山の方に住んでてね、これだけあればオレ一人で３年は生きれるよ」

そう言うと何やら一度顔をしかめたがすぐに返事が返ってきた

「そうでしたか、この町では見かけない人だったので」

まぁたしかに、これだけの荷物を持って座り込んでいたら変だ

妹の方が何やら言いたそうな顔をしている

手のリンゴがシンだけになっているので新しいリンゴをあげると

また満面の笑み

「こら、すいません」

「いや、いいさ」

やはり兄の方は礼儀正しい

兄の方にもリンゴを渡す、少しためらっていたがやはり空腹には耐えられない

３人で食っていったとしても２年は食っていける

オレは空腹は我慢できる方だ、栄養さえ採れれば食料は必要ない

・・・問題はいつまでこの包囲状態が続くかだ

気が狂った人間が何をするか分かったもんじゃない

さらに７日、食事も栄養剤だけになりケンカがやまない

輸入品の栄養剤がなかったらみんな死んでいただろう

オレはその兄妹を連れてもっと人がいない場所に移った

ココは地下の水路、泳いでいったら町に出られるだろうが魔物と出会うだろう

幸いココはダレモイナイのでケンカなどには巻きこまれない

「どうなるんですかね、」

兄がつぶやく、兄も相当いらだちがたまっているのだろう

オレのひざをマクラに寝ている妹の頭をなでながら聞く

「脱出でもするか？」

「無理ですよ、」

即答された、

コツン、コツン、コツン

だれかが歩いてくる

オレは座ったまま剣を構える、狂った大人だったら困るからだ

ドアが開く

そこにいたのは城の前で戦っていた少女だった

別に剣などは持ってなかったので剣を納める

「え・・・っと、あの、その」

こんな所に人が居るなど思っていなかったのだろうか

袋からパンを取り出し

「食う？」

と聞く、少女は一度とまどいコクリとうなずきオレのとなりに座った

少女はパンを美味しそうに食いながら

「あの、ココで何を・・・」

と聞いてきた、

確かにココに居たら栄養剤は配られない

オレは水を飲みながら

「子供の親ごっこ」

そう言うと少女は不思議そうな顔をした

兄はくすくす笑っている

「君こそ何やってんの？一人で歩いてたら襲われちゃうぜ？」

オレも笑いながら質問をする

「え、あ、その、ココの水は飲めるかも知れないから・・・」

何が恥ずかしいのか少女は顔を赤らめながら答える

「むりむり、ココの水なんて飲んだら腹痛になるって」

「そ、そうですか・・・・」

少女は残念そうにうつむいた

「るん、るんるんるるるん♪」

適当に鼻歌を歌いながら妹の頭をなでる

「兄妹ですか？」

少女が聞いてくる

「いや、お友達。なっ」

兄にウインクすると兄は

「はい、そうですね、友達です」

と、笑顔で答えた

「そうです・・・・コホッコホ」

少女は何かをしゃべろうとして、せき込んだ、パンが詰まったのだろう

背中をさすりながら水入りのボトルを少女の渡すと、少女は一気に水を飲んだ

一息つきシャベリ出す

「すいません」

「いえいえ」

気を使わせるといけないので笑顔で答えて、手を放す

それでもなぜか顔を赤くする少女

「あの、何でこんなに大量の食べ物が？」

やはりそれを聞きたがるのか、

人間とは何でそんなに何でも聞くんだか

「オレの家は山の方にあって、今日は１年ぶりの買い出しにきたんだ」

「そうなんですか、災難でしたね」

そのまま少女はパンを食べ続ける

やはり栄養剤だけでは腹は満たされない

少女は何かを言いたそうにしているが言わない

何を言いたいか大体分かる、『その食料をみなさんにも分けてあげてくれませんか？』だ

前に戦っていたと言うことは、騎士団所属かお人好しだ

それか・・・・・・勇者

魔国でウワサだった女勇者、出身地はココだったような気がする

勇者にしては珍しく剣も扱えず、魔法派らしい

しかも本当ならココのお姫様らしい

王様も自分の娘を魔王退治に出すのは少し気が引くだろう

「あの、他のみなさんにも食べ物を分けてあげてもらえませんか？」

来た、少し違ったが意味は同じだ

彼女の方を見るととても真剣な目でこちらを見ている

ココでゲームをすることにした

オレは彼女の顔から目を逸らさない

どっちが先に目を放すかだ、ジッと彼女の目を見つめる

別にオカシイ顔をするわけではなくただ見つめる

すると段々彼女の顔が赤くなっていくのが分かる

おもしろい、彼女の目も何時しか真剣な目からさっきのような普通の目になっていった

止めるタイミングがつかめない、彼女の目は普通の目から・・・・

「はぁ、わかった」

これ以上やるとホントに止められなくなってしまう

・・・・・・シクシク

「あ、はい・・・・・」

あまりうれしそうじゃない用にも思える

一袋だけ残して、他の袋をすべて渡した

「ありがとうございます」

彼女はお礼を言って袋を持ち上げようとする

「・・・わぁっ」

持ち上がりそうにないのでオレが持っていった

兵士さんに食べ物を渡した時の兵士さんの涙と

地下に戻ってから上から聞こえた歓声は忘れない