〜カイン〜
何分そうしていただろう?
腕の中で泣き続けるミルフィーユになんて言ってあげればいいか分からず
ただただ抱きしめていた
泣き止んだと思ったら今度は慌てて俺の手の傷を魔法で癒した
プリーストなのかマジシャンなのか分からない
プリーストは回復、補助、光系攻撃呪文が使える
マジシャンは風や火などのその他の攻撃呪文で戦うのだが
ミルフィーユは両方使っている
まぁ関係ないのだが
今、俺は客用の寝室に居る
今日は此処でゆっくり休ませてもらえそうだ
食料などはちゃんとランスロット国から貰えたようで
今日は腹いっぱい食えそうだ
・・・・・・・・・・でも・・・・・・・・・なんだ?
何だか胸騒ぎがする
魔物は倒した、この国も守った、アノ兄妹はちゃんと迷子係に預けた
なんだ?何か忘れている
・・・・・そう、この国をどうして魔物が占領しようとしたか
考えはいくらでもつく、俺に変わる魔王、反逆者
あるいは侵略自体俺の勘違い
どうした?俺には関係ないじゃないか、そうだよ、無関係だ
――本当にそうかの?
え?今のは・・・・・
今のはテレパシー、俺の心への呼びかけをしている奴が居る
珍しい事ではない、精霊はみんな心への呼びかけで会話をするし
魔物だってテレパシーを使う奴はいる
――新たな魔王の場合、お主が逃げたのが責任じゃぞ?
煩い、知った事か
俺は魔王だ、それが当たり前だ
人間を滅亡させるのが普通だ
――反逆者だとしてもお主がちゃんとしておれば起きんかったことじゃ
スルーかよ!!
どうでもいいが何処かで聞いた事のある声だ
「ほっほっほ」
「!?!?」
いきなりの声
心へではなく五感の『聞く』で察知できた
声の主は俺に不思議な地図を渡した爺さん
「あんたが俺の心に呼びかけたのか?」
何で此処に居る、何処から入った、などは聞かなくてもいい
きっとこの爺さんは人間じゃない
「そうじゃよ、」
そうなるとこの爺さんは俺が魔王だと知ってもなお接触した
物好きな奴だ
「何か用か?用があるなら早くしてくれ、俺は眠いんでな」
あからさまに不機嫌な振りをしてベットに横たわる
爺さんは動かずに話す
「聞きたいじゃろ?なぜ魔物が此処に来たか」
この爺さん・・・・・
「分かるのかよ?」
「分かるわい、」
聞きたい、なぜここに来たか・・・
だがそれを知っているのならこの爺さんは何者なんだ?
見た目は80才位の爺さん
だが見た目を変えれる魔物も居る
「教えてくれ」
俺はそう言った
べつに俺に加害を加える気はなさそうだし
聞いておいて損は無いだろう
「うむ、此処を襲わせたのはゴング・K・サタンじゃ」
ゴング・K・サタン
魔王一族の魔王候補者だった一人
俺が魔王になってしまってからは一度も姿を見ていない
あいつは残酷非道の猪突猛進な性格で、
魔王になったなら即人間に戦争を仕掛けていただろう奴だ
殺しを楽しみ残酷な殺し方をする、
『命乞いをしてみろ』や『豚のまねをしたら助けてやる』など言って
死に怯える人間を殺すのが楽しみなようだ
「ケイル・K・サタンもつるんでおる」
ケイル・K・サタン
同じく魔王一族の魔王候補者だった奴だ
冷血非道の冷静沈着な性格で
魔王になったなら戦略的に敵を抹殺していただろう奴だ
人一人殺しても顔色どころか指一本動かさない
命乞いをする人間を躊躇い無く殺す
二人とも魔王役にはうってつけだ
「そ。俺には全くの無関係だな」
布団に潜りながら言う
フワフワな毛布だな
「そうじゃの、お主はこれから旅に出て―――――」
「おい爺、何で旅なんか出にゃならんのじゃ」
布団から飛び出て講義する
「旅の目的はお主次第、気ままに遊ぶもよし、前に渡した地図を使うのもよし」
「旅に出るのは決定事項かい」
どうやら無理にでも旅に行かなくてはならないらしい
俺はただ単に森で暮らして居たいのに・・・
「うむ、ついでにワシは神様じゃ」
「そうか爺。老後の心筋梗塞には注意しろよ」
命の心配をしてやりとっとと追い返そうとする
「スルーしたことは怒らぬが旅には出るのじゃな?」
「おうおう、分るだろ?不老の人生どう生きるかなんてどうでもいいが
直線の人生を歩んでて螺旋状の人生もいいかなっていま少し考えた結果
全く意味は無い事に気づいたので却下」
見事に言い切った俺は満足そうに爺を窓から突き落とした
これくらいで死なないと思いながらも心の中に『チーン』と虚しい音がなった
本気で旅のことを考える
魔剣には3種類あり、俺が一本、魔王城に一本、封印されているのが一本ある
俺が今持っているのは魔王にしか扱えない魔剣、『デス・サタン』
今までの魔王が主に使ってきた魔剣であり
魔力増幅、切れ味抜群、邪悪な力が宿っている
魔王一族は人間の姿から変身する
完璧な化け物へと・・・、そうなると魔剣は持てないんだけどね
これは魔王一族の血があるならだれでも扱える魔剣で
切れ味もあり、なにより魂を吸い取る
魔物でも人間でもこの剣で命を絶つとその生命力を吸収し、体力回復をする
強くなるわけじゃなく、ただ傷が癒えるだけだがな
そして封印されている魔剣、名前は無いが皆『滅亡の素』と呼んでいる
どんな優れた魔王も全く扱えず
一度、最も優れた魔王が使った際、大陸が一つ跡形も無く消し飛んだらしい
その魔王はその直後一緒に灰になった
その事が原因でその魔剣は封印された、
魔剣の封印を解くためには『5大陸』を全部回らなければならない
『中央大陸』『南大陸』『東大陸』『北大陸』『西大陸』が主な大陸で
『5大陸』と言われている。
それと『子大陸』と言う小さな大陸と小島がたくさんある
5大陸には魔剣の封印を解くために必要な『精霊石』がある
精霊石はそれぞれ『精霊の神殿』で精霊達が管理をしている
中央大陸には光の精霊、南大陸には火の精霊、東大陸には風の精霊
北大陸には水の精霊、西大陸には地の精霊が生息している
そして魔剣がある場所が何処かにある闇の神殿
闇の神殿はどこにあるか全く分らないと言う
そして、ゴング達は必ずその魔剣を取りにくる
そうすると俺にとっても厄介だ
人間どころが生き物全体が滅亡するかもしれない
どうする?
俺に出来る事があるならやってみるか、
見てみぬ振りをするか、
魔族の味方をするか・・・・・
『コンコン』
部屋にノックの音が飛び込んだ
「起きてるぜぃ」
適当に返事をしておく
ドアが開き、隙間からミルフィーユが見えた
「・・・・・お邪魔します」
少し遅い返事からして
緊張、戸惑い、恐怖、躊躇い、不安などが予測されるが
今回はガチガチの動き+顔の表情からして緊張と不安だろう
さて、これから何を聞かされるのやら・・・・・