〜ミルフィーユ〜
私は国民全員の前で挨拶をやった
これは普通の事だし、国民がどんな様子なのか心配なのでやっておきたい挨拶だ
挨拶が済み、私はお父様とお母様に言われた
『旅に出なさい』
とうとう追い出されるんだ・・・
でもいやじゃない、むしろ喜ばしい事だ
勇者である証のホーリーマンスを語れるんだから
これは極秘の旅らしい
何処の何だか分らない騎士団のキャラバンに入れてもらい
そこで修行をするらしい
修行と言っても簡単に魔物を倒してレベルアップするだけ
キャラバンとは、家族を失って行き先が無くなった人や
戦士たちの集まり住みこみで働く騎士団などの事
彼らは町で暴れる魔物などを退治することで金をもらっている
商人が集まったキャラバンもある
商人たちは護衛を雇い、町から町へと物を安く買って高く売りさばいている
私の入る騎士団はもう手続きがしてあるらしい
そのキャラバンの人達にも私が勇者である事は内緒
でも流石に私一人では色々と危ないので他に数人自分で護衛を選べと言われた
1人目は弓使いのパール・マインスタン18歳♀
よく遊んでもらっているで頼れるお姉さんだ
一緒に来てくれないかと頼んだら『私?いいよ、なんたってミルの頼みだもんね』と
快く引き受けてくれた、もちろん弓はうまい
2人目はマジシャンのミント・カルクルク16歳♀
私の親友でパールさんと一緒によく遊ぶ
頼む前から『もちろん連れてってくれるのよねぇ』と、行く気満々だった
魔法も一流だ
3人目は騎士のザイン・アントレン20歳♂
パールさんの恋人でパールさんがどうしてもと言うので頼んでみたら
『はい、お任せください』と、かなり真面目な人らしい
実力は知らないがこの国の騎士団長らしい
そんな人連れて行っていいのかなぁ
4人目は薬師のキール・サクアイン15♂
弟のように可愛がってきた子
生意気で可愛げが無いが『姉さんが行くんだったら僕も行きましょう』と
強がっているが本当はかなりの寂しがりやさん
回復薬、毒消しなどをそこらへんに生えている草から作ってしまうすごい子だ
ちなみに私はプリーストとしてキャラバンに入る
そして出来れば・・・・・・・・・・彼にもついてきてほしい
無理だと分っているが今回は全く引く気はない
少しでも行く気があったら絶対に連れて行く
そう決意を固めたと同時に彼の部屋の前についた
『コンコン』とノックをする
「起きてるぜぃ」
いつも通りなんだかふざけた彼の声が聞こえてきて
さっき固めた決意が崩れ去り『緊張』と『不安』の文字に変わった
ドアを開け
「・・・・・・・お邪魔します」
と、お辞儀をする
不安からなんて言えばいいのかわからない
「何?可愛い顔して告白でもしに来た?」
こっちの気も知らずに相変わらずふざけている彼
本当にどうすればいいんだろう?
「まぁ、兎に角座れや」
自分が座っているベットの横を指差す
私は言われた通りにその場所に座り彼を見た
「? ホント何?なんか怖い顔してるぞ?」
そう言われて顔をそむける
怖い顔?私そんな顔してたんだ・・・
何だかすごく恥ずかしくなってきた
「クク・・・、嘘だって、いつも通り可愛い顔立ちしてるって」
そう彼が言う
嘘?・・・ああ、また彼にからかわれた
何だか悔しくなってきた
いつもからかわれてばっかりだから何時かビックリさせてあげたいな
「でもなんだか言いたそうだな、それもものすごく重大な事」
・・・・・・・・・・・・何でも見透かされてる
この数週間、彼は正確に物事を当ててしまう事が多かった
正確じゃなくてもなんとなく見透かされている
「今度はなんだ?なんか言いたいいんだろ?」
私は彼のほうを向き真剣と言える顔で言った
「旅についてきてくれませんか?」
そう聞くと彼は別に驚いてなかった
きっと予測していたのだろう
でも考えている・・・
たまに出る真剣モードだ
彼は言った
「運命を信じて見ないか?」
運命を信じる・・・・・・・
何が言いたいのだろう?よく分らない
「俺もちょうどこれから旅をしようと思っていた」
・・・・でもさっき言い分(いいぶん)からすると続く言葉に良い事はあまりないだろう
私は完全に旅を否定する言葉が入っていないように願った
「俺の目的はただの気まぐれの旅だ、でも最初に行かなきゃならないところがあってな
なので最初からついて行くことは出来ない
だからこの先出合う事があったら一緒に付いて行ってやろう」
戸惑った
この広い世界、旅をしている物同士が出会う可能性なんて0、001%も無いだろう
だからこそ運命を信じようなんて言ったのだろう
でもそれは遠回しに行きたくないと言う意味に取れなくない
「俺がそんなメンドイ旅について行くって事すら考えられないんだ
受け持っていて損は無いと思うぜ?」
その言葉から更に行きたくないのを誤魔化してるんじゃないかと思ってしまう
親しくなってからの彼は面倒な事は私に押し付ける事が多かった
もちろん断った
そうすることで結局2人でやる事が多かったから
「分りました」
・・・・・・・・・・言ってしまった
此処でネバっておけばついてきてくれたかもしれないと今ごろ思う
「OK、んじゃ俺は行くから」
彼はそういうと窓の方に向かった
「い、今からですか!?」
驚くのは当たり前
だって今はもう午後11時
外だって真っ暗だ
「ああ、・・・・・急がなきゃいけないんでな」
こんな時間に、しかも窓から出なきゃいけないほど急いでるんだ・・・
せめて私の出来ることは・・・
「ちょっと待っててください」
そう言ってその部屋を飛び出し、食堂に向かう
コック長さんに今補充されたばかりの保存が利く食料を5日分をもらい
今度は救護室に向かう
回復薬や毒消しなどを貰い、急いで部屋に戻る
彼はなにやら不思議な剣を半分までサヤを抜き眺めていた
そのときの彼の目は幻想的で黄昏ているというのか、兎に角その目に見惚れてしまった
彼は私に気づき、慌てて剣を収めた
そこまで慌てる事は無いと思う
私は彼に近寄り一つのバックを渡す
「5日分の食料と医療道具です」
そう言うと彼は『ありがとう』と笑った
でもその笑いはいつもと違い、和やかな雰囲気を作った
彼は窓から飛び降りる寸前に
「あぁ、そういやお礼言ってもらってなかったな。
今度でいいや、ちゃんとご褒美も頂きますから」
と言って飛び降りた
お礼?何の事だろうか?
記憶をさかのぼってみると重大な事を思い出した
矢から庇ってもらった時、ありがとうの一言も言ってなかった
今度ご褒美を貰うといった以上また会う気があるんだと勝手に思い込む事にした