ポー・・・・・・・・・・

 

ザワザワ・・・・・・・

 

クラスの奴らがさわいでいる

 

オレはいつもこうしてポーとしている

 

なんだか近寄りがたい雰囲気があるらしい

 

オレにはコレと言った特徴がない

 

顔ふつう、頭ふつう、運動神経ふつう

 

あるといったら、ピアノと武術だけ

 

でも、まだだれも知らない・・・・と、思う

 

「おーい、氷牙。

く・ら・い・ぞ!!」

 

ドン!!!

 

ゴハ!!

 

後ろから殴られた

 

ヤルヤツはわかっている

 

後ろを見たら櫟 歩(くぬぎ あゆむ)

 

が立っていた

 

櫟は学校での運動神経ナンバー1、それによくオレに

 

話しかけてくるおかしなヤツだ

 

「そうだよ氷牙君、カビが生えちゃうよ」

 

こっちは、坂井 学(さかい まなぶ)

 

学校での成績ナンバー1、

 

かなり警戒心が高いが、慣れればかなりイイヤツだ

 

「・・・・ねむい」

 

「氷牙・・・寝すぎで死ぬぞ」

 

君には別に関係ない

 

「おーい、氷、歩、学!!」

 

廊下でだれかの声がする

 

おれのことを呼ぶヤツなんてあと一人しかいないんだけど

 

ドタドタドタドタ・・・・・バン

 

「イイ情ホ・・・・・ぐへ」

 

みごとに前のめりに転けた

 

こいつは、雅 良(みやび りょう)

 

学校での工作や絵などナンバー1

 

しかもドジで面白い

 

この3人は、格好良くて

 

学校での美少年ベスト3を争っているらしい

 

「いてて・・・あ、イイ情報があるある」

 

「あるは一回でイイ」

 

こんな時のつっこみはいつも櫟だ

 

「それで、どうしたの?」

 

まじめに話を聞くのが坂井で

 

「聞いて驚くなよ」

 

話題を持ち出すのが雅

 

オレはいつもそのやり取りを見ている

 

べつに、屋上までついて行ったりするわけじゃない

 

なぜかオレの周りでしゃべるのだ

 

屋上にいても、体育館裏にいてもおいかけてくるのだ

 

別に悪い気はしない、人ぎらいな訳じゃないからな

 

ただ、他の人はオレに話しかけずらいらしい

 

雅が言うには恐いらしい

 

まぁ、別に気にしてないんだが

 

「あのな、花梨とデートできることになった!」

 

ギン!!!

 

一瞬クラスの奴らがみんなこっちを見たような気がした

 

美珠 花梨(びしゅ かりん)

 

だれとでも仲良くなる美少女

 

積極的で正義感が強く頭もいい

 

学校一の美少女だ

 

櫟、坂井、雅もそいつにホレている

 

雅は幼なじみらしい

 

「うぉぉ!良!!オマエ最高!!!」

 

「もちろん僕達も連れてってくれるよね!」

 

「あぁ、もちろんだ、なぁ氷!」

 

「・・・・・・・なぜオレにふる」

 

ついでに言うとオレは

 

鉄瑠 氷牙(てつる ひょうが)

 

この三人が言うに、

 

『恐くて天然バカ』、らしい

 

『オマエ実はモテている』とも言っていた

 

「なぜって、オマエも行くからに決まってんじゃん」

 

「・・・・・なぜ?」

 

なぜ行かなくてはいけないんだろう

 

「なぜって氷がいないとつまんないんだよ」

 

「そうだぜ氷牙、連れてってもらえるもんは行かないと」

 

「・・・・・・・そういうものか?」

 

「そういうものだよ」

 

「・・・・・そっか・・・・ならいく・・・・」

 

「「「やっぱバカだ」」」

 

「・・・・・・なんかいった?」

 

「「「何か聞こえた?」」」

 

 

 

 

 

 

☆              ○              ×

 

 

 

 

 

「・・・・・・・遊園地・・・・」

 

「「「そう、遊園地」」」

 

デート=遊園地

 

と、言うのはホントなんだな・・・

 

だがデートというのは

 

1対1でやるもんじゃないのか?

 

1対4でしてもいいものなのか?

 

「氷も花梨にホレちまえ!!」

 

「あぁ、花梨ちゃん・・・・・」

 

「・・・・・(逝ってしまっている)」

 

「・・・・そんなに可愛いのか?」

 

「「「当たり前だ(よ)!!!」

 

怒鳴らなくてもいいのに

 

「お〜い、待った〜?」

 

だれかがこちらに向かって走ってくる

 

「「「全然!!」」」

 

この3人はよくハモルな、と、よく思う

 

待ってないとこいつらが言ったものの実は結構待ってたりする

 

「ハァ、ハァ、ご、ごめんね

したくに手間取っちゃって」

 

ひざに手をおき、息を整えている

 

「「「もっと遅くても良かったのに」」」

 

またハモった

 

こいつらは本当に仲がいいんだな

 

「あれ?こちらの方は?」

 

オレに向いて言う

 

あぁ、確かに可愛いな

 

直視したら『ドキッ』っと来る

 

だが、これだけでは『好き』という感情じゃないな

 

「あぁ、コイツが氷」

 

「うん、氷牙」

 

「そうそう、氷牙君」

 

こいつらパニックというか、

 

興奮してるな・・・

 

「あ、この人がうわさの・・・・・」

 

「・・・・・・どんなうわさだ」

 

そんなにヤバイうわさがあるのか?

 

別になんにもしてないけどな

 

「あ、うわさっていっても

良達から聞いた話だから」

 

「・・・・・・・雅」

 

雅をにらむ

 

「氷こわ〜い」

 

とかいって、美珠に抱きつく

 

が、すぐに残りの2人振りはらわれる

 

「良!!抜け駆けすんな!!」

 

「そうだそうだ!!」

 

「いた!い!痛いって!!けんな!!足跡が付く!!

や、やめろ!!幼なじみだからイーの!」

 

「だからってやっていいことと悪いことがあるワイ!!

それと花梨ちゃんに触れるのは重罪じゃ!!!」

 

「そうだそうだ!!!!」

 

「い、痛い!!!ごめんなさい!!!あ、謝ったんだからやめんかボケ!!!!

あ、い、痛い!!!ごめんなさ〜い」

 

いつもこんな調子なのだろうか?

 

まぁ、オレの前でもこんなのだからな

 

だが、場をわきまえろよ・・・・・・

 

・・・・・・帰るか・・・・・

 

「「「どこへ行く!!」」」

 

帰ろうと思ったら引き止められた

 

案の定この3人に

 

「・・・・・・・帰る」

 

「「「帰るな!!」」」

 

「・・・・・・・オレが居ても意味がないだろう?」

 

「「「おれ(ぼく)達を止めるのは君だけだ!!!」」」

 

「・・・・・・・・・・そうか?」

 

「「「そうだ!!!」」」

 

「・・・・・・・・・・・・そうか・・・・・・・・わかった」

 

「「「やっぱバカだ」」」

 

「・・・・・・・・・・・・何か言ったか?」

 

「「「何か聞こえたか?」」」

 

 

 

 

×            ○          □

 

 

 

 

「だーかーらー、幼なじみのオレがとなりに乗る」

 

「関係ないだろ、オレがとなり乗る」

 

「なんで?ふつーぼくがとなりでしょ」

 

「・・・・・・・・・・どこでもいっしょだろ」

 

「「「ちがう!!」」」

 

今だれが美珠のとなりか争っている

 

なぜだ?ジェットコースターの席なんて

 

どこでもいいだろ

 

「「「花梨(ちゃん)はだれがいい!!」」」

 

「へ?ええっと・・・・・」

 

イキナリ話を振られて

 

困ってるようだ

 

「・・・・・・・・・・・・・交代で乗れば?」

 

不意につぶやいた言葉にみんなこちらを見る

 

オレはまずいことを言ったのか?

 

「「「さすがは氷(牙)(君)その手があった!!」」」

 

「・・・・・・・・・」

 

こいつらは、オレよりバカなのか?

 

 

 

○               ×              □

 

 

 

「次はオレの番だろ!!」

 

「いま+−無しだから順番やり直せよ!!」

 

「そうだ!!絶対不公平だ!!!!」

 

「・・・・・・・・・・・どうでもいいだろ」

 

「「「良くない!!!!」」」

 

なぜだ?

 

なぜいけないんだ?

 

ジェットコースター雅、コーヒーカップ櫟

 

水中ジェットコースター坂井

 

そして今、お化けやしきなのだ

 

別に順番なんてどうでもイイじゃないか

 

「ジャンケンしようぜ!!」

 

「そうだそうだ!!」

 

「今までどうりでいいんだよ!!」

 

オレは決めた・・・今度から美珠が居るところには行かないと

 

「あの・・・・」

 

「「「な〜に?」」」

 

さっきまであんなに言い争ってたのに

 

コロッと変われるこいつらがすごい

 

「氷牙君は乗らないの?」

 

そういえばオレは今までのヤツなんにも乗ってなかったな

 

フリーパスがもったいないな

 

「コイツはイーの、勝手についてきたんだから」

 

「そそ、ほっとけ、こんなバカ」

 

「ただの付きそいだから、無視していいよ」

 

言ってくれるな〜バカども

 

オレだって来たくて来た訳じゃないわい

 

いや、そのまえにおまえらが口車に乗せたんだろーが

 

「えー、でもだって順番だから次氷牙君の番ね?」

 

「・・・・・・・・・・・・・オレはいい」

 

「ダメ、順番守らなきゃ」

 

手を引っ張られお化けやしきの中に入っていく

 

積極的と言うより強引に近いな・・・・

 

残りの3人がうらやましそうにこっちを見ている

 

そいつらに手を振って『さよなら』と言った

 

 

 

 

○              ×                 □

 

 

 

 

 

お化けやしきの中に入ってからずっとオレの腕を持って

 

放さない美珠

 

「こわいよぅ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・なら入るなよ」

 

今にも泣きそうな顔をして言う美珠

 

「だって、良達があんなに楽しみにしてたから・・・・・・」

 

それは、君といっしょだったからだと思うぞ

 

腕をつかまれて動きにくい

 

『ぐぎゃぁ〜〜〜〜〜』

 

「ひゃあ!!!!」

 

何かがでてくるたびに

 

オレのうでは胸に押しつけられる

 

別の意味で心臓に悪い

 

「で、出口だ〜〜」

 

オレの手を放し一目散にかけ出す・・・・・だが

 

『うぎゃゃ〜〜〜〜〜〜』

 

「ひゃぁ!!!!」

 

最後の最後に天上からゾンビがでてきて

 

それに驚いた美珠は後ろにしりもちをついた

 

「・・・・・・・・・・・・急に走るからだ」

 

手をさしのべる

 

「へ?あ、うん、ありがとう」

 

ためらいながらその手を取る

 

オレがした行動はそんなに異常だったのだろうか?

 

「ひゃ?」

 

「は?」

 

せっかく立ち上がったのにまた座った

 

なにがしたいんだ?

 

「こ、腰が抜けちゃったみたい・・・」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

☆            ○              ×

 

 

 

 

 

「「「なにやってんだ(の)このバカやろーーーーー」」」

 

お化けやしきを出たらイキナリそう言われた

 

ナニって・・・・・・・・おんぶ?

 

「氷!!オレの幼なじみに何をしている!!」

 

「オマエ!!それは死刑行為だぞ!!!!」

 

「そうだそうだ!!!!」

 

言いたい放題イイやがって

 

オレだって好きでこんなのやってる訳あるか!!

 

周りの視線痛いし、おも・・・・・くは・・・・・・・ないけど

 

動きずらいし!!!!

 

「あはは、ビックリして腰抜けちゃった

アンマリ氷牙君責めないであげてね?」

 

「「「もちろんです」」」

 

人間って言うのはこんなにコロッと変われるもんなんだな・・・・・・・

 

 

 

○           ×             △

 

 

 

コレは不幸か幸運か・・・・・

 

「それじゃあ、いってきま〜す」

 

美珠の元気がよくて可愛らしい声

 

「氷!!オレの幼なじみに手を出すなよ!!!」

 

「後ろから見てるからな!!」

 

「そうだそうだ!!!」

 

オレと美珠を乗せた観覧車が上っていく

 

観覧車が最後に残った乗り物で

 

+−が無かったのでジャンケンをしたのだ

 

オレはサラサラやる気はなかったが

 

美珠に無理ヤリやらされて勝ってしまって今にいたる

 

「キレイだね〜」

 

のんきだな

 

ま、警戒されるより楽か・・・

 

窓に『コン』と、頭を付けて窓の外をながめる

 

外はもう真っ暗だ・・・・・・

 

家やマンションなどの明かりしかない・・・・・・・・キレイだな

 

・・・・・何で生き残れたのだろう・・・・・

 

オレの身内はみんな飛行機の墜落で死んだ

 

『みんな』だ、その中でオレだけ生き残った

 

腕に一生消えない小指程度の火傷を負っただけ・・・・・

 

あの日も飛行機からこんな風に町を見ていた

 

みんなで初めての海外パーティーに行ったのだ

 

身内みんなで・・・・・・・・・・

 

エンジントラブルでイキナリ『ガクン』と

 

下に落ちたのを覚えている

 

それから先は覚えてない、気がつけば病院だった

 

なにがなんだかわからなかった

 

だが、すぐに理解できた、『みんな死んだんだ』

 

中2のときだった

 

『みんな』の、遺産とバイトで今は生活している

 

全部合わせて5億程度遺産があった

 

だが、『幸せじゃない』

 

これだけは、・・・・・・わかる

 

「氷牙君・・・・・泣いてる・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

本当だ・・・・・・

 

窓に映って見える・・・・・

 

情けない・・・・この位で泣くなんて・・・・・・・

 

ほおに布みたいなものが当たる

 

見ると美珠が涙をハンカチでぬぐってくれている

 

「・・・・・・いい・・・・・・自分でヤル」

 

美珠の手を退けようとする

 

「いいから、やらせて?」

 

そう言ってくれる美珠を一瞬ものすごく抱きしめたくなった