ココはまだ人通りが少ないから、視線が辛くないが人通りに出たら辛いだろうな

 

何て事を考えながら美珠のとなりを歩く

 

コンビニを出てから何にも会話をしていないオレ達

 

ココで美珠が口を開いた

 

「ねー、さっき常連さんって言ってたけど」

 

「・・・朝と夜彼処で弁当買ってる」

 

ココでまた無言、バカだな

 

自分から話を終わらしてしまった

 

何でも言いから口を開いてみた

 

「・・・彼処でいつからバイトを?」

 

「う〜ん、高校入ってからかな」

 

・・・また会話が途切れた

 

焦ったように美珠が

 

「じゃあ私達すれ違いだったんだね」

 

と言う、何か言葉を返さなければ失礼だから

 

「・・・そうだな」

 

と返しておく、また会話が途切れた

 

やはり自分が会話を途絶えさせたから何かしゃべらないといけないな

 

「・・・雅達ってイイヤツらだよな」

 

オレは思ったことをつぶやいた

 

何でこんなこと言ってるんだろう、バカだな

 

「私もそう思う」

 

・・・・・終わった

 

やはり会話という物は自然消滅するものだと決めつける

 

オレから会話を途絶えさせてないから何となく気が楽だ

 

「ねー、しりとりしよっか?」

 

なぜ?と聞きたいが恐らく『気まずいから』何てこと言えないだろう

 

コクリと縦にうなずくだけにしておく

 

「じゃあ、『しりとり』の『り』」

 

定番だなと思いながら考える

 

「リール」

 

適当だがしりとり何てこんなもんだろう

 

美珠は少し考え

 

「ルビー!」

 

と、元気良く答えた

 

「イルリガートル」

 

だがオレは前を見ながら即答する

 

「ルーレット!」

 

「トータル」

 

「ルックス!」

 

「スコール」

 

「また『る』?る、る、る、る〜〜」

 

考えこんでいる美珠、そろそろ『る』ネタも切れただろう

 

「うぅ〜、降参〜」

 

勝ち、別にうれしくはない

 

「もう一回!!」

 

と、悔しそうに美珠は言った

 

「じゃあしりとりの『り』!」

 

「リール」

 

言った瞬間、美珠がこちらをウルウルした目で見てきた

 

オレは不敵な笑みをうかべるだけだった

 

 

 

 

○                ×                □

 

 

 

 

 

「「おい、どーゆーことだよ!!」」

 

案の定昼休み屋上で櫟たちに問い詰められている

 

理由は朝のことだろう

 

「何でオマエが花梨ちゃんと一緒に登校してんだよ!」

 

「そうだよ!ぼくだって朝はまだなのに!!」

 

櫟、坂井の猛攻撃、何で一緒に登校したか?

 

そんなのオレが聞きたいくらいだ、

 

確かに一緒に登校できたのはうれしい、だが頼んだ訳じゃない

 

なのにオレが責められるのは筋違いなのではないか?

 

だがそんなことを考えても何も変わらない、ここは適当に済ましてしまおう

 

「・・・・・電車が一緒だった」

 

「オマエ歩登校だろうが!」

 

見事に櫟につっこみを入れられてしまった

 

どうしようかと悩んでいると

 

「おい、パンが無くなるぞ」

 

と、言う雅の声で櫟と坂井が我にかえる

 

「「あ!」」

 

櫟と坂井が同時に声を上げ、屋上を出る

 

この三人はいつも売店のパンなのだ

 

「・・・オマエは行かないのか?」

 

ココに残っている雅に聞く

 

コイツもパンのハズだ

 

「オマエと冷静にじっくり話をしなくていけないんでな」

 

そういうことか、確かにあいつらが居ると冷静じゃないな

 

だがこんなにシンケンな雅は珍しいな

 

雅は人差し指を額に当て言葉を発する

 

「オレが察するに一緒に登校しようと誘ったのは花梨だろう?」

 

「・・・当たり。なぜわかった?」

 

「ま、幼なじみだからな」

 

幼なじみか、そんなもので分かるのだろうか?

 

「それでだ、単刀直入に聞くがオマエは花梨が好きか?」

 

ずいぶん急だな、確かに観覧車のころから気になっていたが

 

好きかどうかは分からない

 

だがオレはウソを付いた

 

「・・・ああ、好きだ」

 

好きかどうか分からないのにこんな答えを出すのは失礼だろう

 

だが一緒にいると楽しいのは事実であり、退屈もしない

 

なぜか安心するのだ

 

「そうか、好きか・・・」

 

そう言うと少しうつむく雅、ライバルが増えたのだから気にくわないだろう

 

だが雅は、

 

「ならもっと積極的であれ」

 

と、アドバイスをした

 

オレはかなり驚いている、かなりどころではない

 

ライバルにアドバイスをしたのだ、普通はあり得ないことだろう

 

「なんだ?そんな驚いたような顔して」

 

雅は平然としている

 

「・・・・・いや、なんでもない」

 

雅が平然としているのでオレも冷静なふりをする

 

これだけ驚いているのを隠すのは一苦労だ

 

「はは、何でアドバイスをしたか悩んでるんだろう?」

 

雅は笑いながら言った

 

見すかされていた、何か気にくわないが仕方ないだろう

 

「ま、確かにライバルにアドバイスするのは変だな」

 

変だ、頭がおかしいかそいつに気がないとしか思えない

 

「まぁオレら親友だからな、恋も知らない君を少しサポートするよ!」

 

と、ポーズを決めながらオレに向かってウインクをした

 

言いヤツなのかバカなのか分からない

 

「とにかく積極的になってみろ」

 

そして櫟と坂井が帰ってきて会話が途絶えた

 

 

 

 

 

★          ○           #

 

 

 

 

 

ここは屋上、今日は雅に呼び出しをくらった

 

「・・・・・遅い」

 

授業サボってまで来てやったのにかんじんの雅が来ない

 

『ギ〜』と、屋上のとびらが開く音がした

 

「悪い悪い、授業抜けるの時間掛かって」

 

頭をかきながらこちらに近寄ってくる

 

教室に行かなきゃ良いのにと、思いつつ声には出さない

 

フェンスにもたれかかっているオレのとなりに座り

 

「んで、調子どう?」

 

と、聞いてきた

 

調子というのは体調のことだろうか?

 

「・・・元気」

 

と言うと、イキナリ笑い出した

 

オレの視線にきずいたのか、笑うのを止め

 

「悪い、思ったとおりの反応だったから」

 

『ククッ』と、最後に少し笑い謝ってきた

 

思った通りの反応というのは、オレはそんなにわかりやすいのだろうか?

 

「そんなに怒るなって」

 

「・・・怒ってはない」

 

怒っているように見えるのだろうか?

 

正直全く怒ってない、ただオレの単純さにちょっとショックだった

 

「そうか、よし本題に入ろう」

 

怒ってないと言うのが分かったのだろう

 

また元気になった、元気すぎるのもどうかと思うが・・・

 

「花梨とはどうだ?ちゃんと積極的か?何か進展は?」

 

一言言うごとに一歩ずつ顔を近づけてくる

 

アブナイ距離まで近づいてきたので、その場から動く

 

「・・・・・分かったことがある」

 

そう、大事なことが分かった

 

「?」

 

雅は『何?』と言いたげな顔をしている

 

「・・・6月から7月までオレは美珠に自分なりに積極的にしてきたつもりだ、

 

なるべく一緒に登校できるようにしたし、話もできるだけしてきたつもりだ、

 

でもそんなこと美珠には何の得もないとな。

 

話なんて断然おまえらと話した方が楽しいし、オレと居ても何の得もない

 

オレは頭が良くないから坂井のように勉強を教えてやることもできないし、

 

それ以前にオレより成績が上だ

 

スポーツも櫟に教えてもらった方が覚えやすいし、自分でも出来るだろう

 

オマエのように何でも話せるような仲でもない。

 

となると、他の男ども同然バカな何のとりえもないストーカーに近いヤツと同じだなと」

 

櫟を見ると案外真面目に聞いてくれている

 

「そうか、まぁ確かにな」

 

否定してくれないところが悲しいが事実だから仕方ない

 

雅は少し考えて言葉を発する

 

「んで?オマエどうするんだ?」

 

「・・・簡単だ、邪魔者は消える」

 

これ以上近くにいても邪魔だろう

 

またいつもの生活を取りもどせばいい

 

「おまえの愛はそんな物なのか?」

 

愛なんて恥ずかしい言葉よく使えるなと思う

 

だいたい恋愛感情なのかすら分からないまま付きまとったら余計迷惑だろう

 

「・・・ああ、恐らくな」

 

確実にだ、

 

雅は悲しそうに

 

「そうか、おまえに恋はまだ早かったか、お父さんは悲しいぞ」

 

と、うそ泣きをしている

 

少しでも場の空気を変えようとしているのだろう

 

「・・・正直言うと恋愛感情って何なのかすら分からない」

 

そう言いながらフェンスに寄りかかり空を見上げる

 

雅をオレのとなりに座り

 

「そうか、恋愛感情なんて人それぞれだと思うぞ」

 

適当だなと思いながら雅の話を聞く

 

「オレも櫟も坂井もみんな花梨が好きだ。

 

それはオマエが言う恋愛感情だろう、だが恋愛感情にも色々抱き方がある

 

オレがおまえを好きだと言ってもきっとオマエは友情関係だと思うだろう

 

いや、実際そうだぞ?その感情を花梨に抱いたのがオレの恋愛感情だ

 

他の人などどうでも良い、ただそいつらと一緒にいるときが幸せ

 

そんな感情をお前らや花梨に抱いたんだ

 

それで花梨は女だからそれが恋愛感情だと思っている

 

オレも花梨に会ったときは好きじゃなかったんだぞ?

 

だが時が経つにつれ段々離れたくないと思うようになってきた

 

それがオレの恋愛感情

 

櫟は一目ぼれだったらしい、出会ったときに運命をビビッと感じたらしいぞ

 

それからも会うたびにどんどん好きになっていったらしい、

 

ま、最初はルックスだけで好きになってあとから性格も好きになっていったんだな

 

そしてそれを恋愛感情だと思ってるんだ

 

坂井は絵を見た、その絵が魅力的な絵でそれを書いた美珠にほれたらしい

 

そして今ではルックスも、性格も全て好きになったらしい

 

それが坂井の恋愛感情

 

他にも、笑顔が可愛いとか優しいところが良いとか色々ある

 

人を好きになるきっかけなんて沢山あるしそれが恋愛感情とも限らない

 

胸が大きかったらそれで良いとかスタイルが良いから好きとかもあるしな

 

かんじんなのは両方幸せなのかどうかだ

 

もし花梨に好きなやつが出来たら応援するぜ、あきらめる訳じゃないけどな」

 

直に驚いている

 

雅から恋愛について語られるなんて思っても見なかった

 

そしてなぜかそれに説得力があり、こいつの美珠に対する思いが嫌でも伝わってきた

 

キーンコーンカーンコーン

 

チャイムによって『雅の恋愛講座』は幕を下ろした