「・・・ま、当たり前の結果だな」

 

手をグーにして前につき出す

 

「はぁ、はぁ、つ、強い・・・・・」

 

一方さっきの少女はその場で横になって息を整えている

 

結果は剣道、柔道両方10対0、

 

もちろん10がオレ

 

本当は剣道だけのはずが柔道もサービスしてやった

 

「も、もう一回・・・」

 

よろつきながら立ち上がる少女、今にも倒れそうだ

 

「・・・やめとけ、何度やったって結果は同じだ」

 

少女の肩に手を置き言葉を掛ける

 

少女は面白くなさそうにその場に座り込んだ

 

「・・・着替えて来い、送ってってやる」

 

その言葉にすごく驚いたようにこちらを向く

 

確かにこんな事を言うと驚くだろう

 

だがもう暗いしこの少女もふらふらだ、危なすぎる

 

「変な事する気じゃないでしょーねー」

 

自分を抱えるようにして目を細める少女

 

・・・・・・・こんな事を言われるとは思ってなかった

 

やはりコイツは面白い

 

「・・・頭オカシイんじゃないか?」

 

と言い少女をけった

 

 

 

 

 

○            ★            □

 

 

 

 

 

結局少女を家まで送ることにした

 

「そう言えばまだ名前言ってなかったね、

 

私は高崎 冷(たかさき れい)よろしくね」

 

高崎・・・・・冷・・・・・

 

ああ、確かそんな名前だったな

 

なぜかこの子と居るとなつかしい感じがする

 

気のせいだろうか?

 

「・・・なぁ、どっかで会ったこと無い?」

 

高崎がピクリと動いたのをオレは見逃さなかった

 

こちらを向いた高崎の顔は明らかに動揺している

 

「どうして?」

 

気のせいだろうが声が少し震えているような気がする

 

「・・・何となく、懐かしい感じがする」

 

本心だ、懐かしい、それしか言葉が見つからない

 

すると彼女は少し考え

 

「・・・ならいつか私の家にきなよ、何か思い出すかもよ?」

 

と言った、女性の家に行くのもどうかと思ったが

 

何か忘れているのなら思い出した方がいいだろう

 

実は飛行機墜落事故の日までの記憶にアイマイな部分があるのだ

 

事故を起こす前の記憶があまりない、

 

どうせしばらく病院学校だったのであまり気にしていなかった

 

だから無理に思い出そうとも思い出したいとも思わなかった

 

ま、何か忘れているなら思い出した方がいい、だから

 

「・・・暇な時な」

 

とアイマイな言葉を返した

 

それからはあまり会話がなかった

 

しばらく歩いていて思った、オレの帰宅路じゃん

 

いつものコンビニまで来てしまった

 

晩飯を買わなければならない

 

「・・・このコンビニよって良いか?」

 

一様了承を得ておく

 

「いいよ」

 

以外とアッサリした返事だった

 

了承を得たのでコンビニに入る

 

「いらっしゃ〜ぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜ぁぁぁぁぁぃぃぃぃぃ〜〜〜???」

 

訳の分からない接客だなと思い、この声の持ち主の店長の方を見る

 

店長は何かの雑誌を片手に何度も目をこすっている

 

「・・・目がはれますよ」

 

いつも通り適当にアイサツをして弁当売場に向かう

 

いつもの通り230円の弁当を取り

 

いつもの通りレジに持っていく

 

「おい、だれだよあの可愛い子」

 

店長が雑誌を読んでいる高崎を指さす

 

「・・・知り合い」

 

200円を渡しながら言う

 

まだ友達とは呼べない

 

「はぁ、やっぱりお前も・・・」

 

と、何やら重い空気を出している店長

 

もう用もないので早く高崎を家まで送る

 

「・・・おい、いくぞ」

 

雑誌を読んでいる高崎にその場で声をかける

 

「うん、もうちょっと」

 

右手を少し挙げながら答える

 

かなり真剣にその雑誌を読んでいる

 

「氷牙・・・お前だけは男になって欲しくなかった・・・」

 

何やら真剣に悩んでいる様子の店長

 

だがオレには関係ない、

 

暇なのでオレもさっきまで店長が読んでいた雑誌を読む

 

なにやら宝石の写真が載っている

 

店長はこんな雑誌を読むのだろうか?

 

オレはふだん漫画やファンタシー小説しか読まないから分からないが・・・

 

恐らくさっきまで店長が飲んでいたのだろう、まだ暖かいコーヒーに口を付ける

 

「エロ本?」

 

「ブッ!!」

 

イキナリ後ろから掛かった声に思わずコーヒーを噴き出してしまった

 

それに内容が内容だ、だれでも驚くだろう

 

「ゴホッ、ゴホ!」

 

「わわわ、だ、大丈夫?」

 

声の持ち主、高崎が背中をさすってくれる

 

気管に入ってしまったコーヒーに辛さを覚える

 

落ち着いたところで

 

「ゴホッ・・・も、もう大丈夫」

 

右手で背中をさすってくれている手を退け、

 

カウンターの上にあるフキンでオレが噴き出したコーヒーをふく

 

「・・・それよりイキナリエロ本はないんじゃないか?」

 

床やカウンターをふきながら高崎に問いかける

 

「え、だって男の子ってそんなのしか見ないじゃん」

 

全く動揺していない普通の声

 

高崎の頭の中の男という生物はどうやら変態同然の生物らしい

 

「・・・男みんなにそんなイメージ持つのはどうかと思うな」

 

フキンをその場にある流しで洗う

 

「違うの?」

 

「違う」

 

即答だった

 

このまま勘違いされていたら高崎にも、健全な男の子にも良くない

 

フキン流しで洗い、元の場所に戻しておく

 

「仲が良くてイイなー」

 

かなり不機嫌で雑誌を読んでいる店長、何か手伝ってくれても良いのに・・・

 

「なに、このオジサン」

 

「オジッ・・・・!?」

 

高崎が容赦なく言った『オジサン』という一言にかなり動揺している店長

 

オレから見てもまだ『お兄さん』だ

 

「この女ぁ〜、氷河の知り合いだからって容赦しね〜

 

東京タワーの天辺から突き落としてやるぅ〜」

 

手の指が全て不気味な動きをしている

 

それに目が本気だ

 

やると言ったらやる人なので、高崎の手を引きその場を去った