英語の授業中

 

特に勉強が好きなわけでもなく頭も良くない

 

正直暇だらけだ

 

チャイムが鳴るのを今か今かを待ち望んでいると

 

「鉄瑠、ちょっと来い」

 

国語の戸谷先生に廊下から呼び出される

 

この先生は店長さんの親友で

 

俺のことを差別せず普通に接してくれるいい先生・・・・かな?

 

とにかく今は英語授業中、勝手に抜けても誰も何も言わないと思うが

 

この先生に呼び出される時はいい事が無いので断る

 

「・・・分かりませんか?今は授業中なんです、真剣に学習しているんです」

 

と、もっともらしいことを言う

 

「ノートも教科書もシャーペンすら出してない奴が言うことじゃないな」

 

もっともな事を言われ、仕方なく席を立つ

 

みんなの視線が俺に集まる

 

正直目立つのは嫌いだ

 

「何のようですか?」

 

廊下に出ては他のクラスの迷惑にならないよう少量の声で問い掛ける

 

すると戸谷先生は俺の前に一枚の紙を出した

 

「夏休みが終わってから体育祭があるだろ、それでお前が仕切ってくれ」

 

「冗談・・・」

 

紙に書いてある内容は体育祭で何の行事をやるかなどが書いてある

 

戸谷先生の目を見ると真剣だ

 

どうやら本気らしい

 

「・・・俺じゃ無理ですよ、

 

頭も良くないし運動神経だってそこそこだし絵なんか没です。あっはっは」

 

全く笑っていない笑い声をわざとらしく上げる

 

なぜ一々何処かの誰かさん達のことを言ったかと言うと

 

俺の名前が書いてある『係員』の所に坂井、櫟、雅と書いてあったからだ

 

なんとその隣には美珠の名前もある

 

冗談じゃない、こんな有名人だらけの場所に別の意味での有名人が入る勇気がない

 

兎に角断る

 

「なぜお前を入れるかと言うと雅たちが『氷が居ないとやらねー』

 

などと言っているからだ」

 

なんだ、そういうことか

 

何で何のとりえもない俺がそんな重要な所に入れられるのかと思ったよ

 

ははは、どうせ俺はオマケだよ

 

・・・・・などと独り言を心の中でつぶやき断る事に専念する

 

・・・・・いい断り方を見つけた、が、この断り方を使っても良いものか・・・・・

 

まぁいいだろう

 

「・・・・・・先生。知ってますよね、夏休みがちょうど親の命日なんです

 

なのにそんな事を押し付けるなんて・・・・、いじめですか?」

 

心の中で一生懸命母さんと父さんに謝りながら言葉を発する

 

それにこの言葉は効果があったようで

 

「・・・ああ、そう言えばそうだったな・・・

 

じゃあ次回もう一度だけ聞きに来るからそのときに答えを出してくれ」

 

と言って職員室に行ってしまった

 

答えはNOと今出したからまた聞きに来るなんて必要ないのにな

 

キーンコーンカーンコーン♪

 

昼休みだなぁ。と思いながら教室入る

 

ちょうど号令をしてるのでドアの前で止まり、号令が終わってから弁当を取りに行く

 

今日は恐らく雅たちが来る。

 

予想通り廊下まで周りに花、もとい周りに女をもてあました櫟が来た

 

教室に櫟がはいると渋々帰っていく女達

 

櫟は俺の椅子に座るとさっき買って来ただろうパンで俺の頭を叩く

 

「よっ!いつも通り元気ね〜な」

 

「・・・ほっとけ」

 

いつも通りの会話

 

何かとこれが楽しいと思い始めたのは最近だ

 

「そーいえば体育祭のアレ、引き受けるよな?」

 

パンに噛り付きながら言う櫟

 

どうしても俺を巻き込みたいか・・・

 

「いや、断った」

 

「なぜに!?」

 

俺が引き受けるとでも思ったのかこの馬鹿

 

俺は弁当のふたを開けながら答えてやる

 

「・・・面倒だからだ」

 

割り箸を割る

 

「おいおい・・・。そしたら俺らまで出られなくなるじゃねーか」

 

弁当のオカズを口に運ぶ

 

係員になる理由は美珠が居るからだろう

 

きっと夏休みの半分をその係員で終わらせる

 

逆に半分美珠と居られると言う事になる

 

だが、全く俺は無関係

 

「・・・勝手にやれば良いだろう。俺は関係ない」

 

今度は白米を口に運ぶ

 

「あのなー、いつも言って―――――――――――――」

 

「そう言えば坂井と雅が遅いな」

 

美珠の話となると長いので途中で櫟の話をさえぎる

 

何時もならとっくに坂井も雅も来ているころだ

 

「あぁ、そう言えば雅は用事があって坂井は生徒会か何かだったな」

 

「・・・先に言え」

 

別に先に言う理由も無いのだが、これは基本の突っ込みだ

 

と言うことはコイツと二人か・・・・・

 

二人・・・・・?・・・・・・・二人っきり・・・・・?

 

「二人っきりだな」

 

櫟がフッと呟いた

 

すこし櫟から離れる

 

「おい、何で避けるンだよ!!」

 

思いっきり怒鳴る櫟

 

「・・・いや、なんか気持ち悪いからな」

 

変な事を考える俺も俺だが

 

気持ち悪い事を呟く櫟も櫟だ

 

「まぁいい、それよりホントにやらないのか?」

 

パンを全部食い終わった櫟

 

体育祭の係員の事だろう

 

やらないと言ったらやらない

 

「・・・・やらないな。面倒だ」

 

弁当を全部食い終わる

 

チャイムが鳴るまで後少し

 

「そうか、じゃあ自分で雅と坂井に言えよ」

 

パンの袋をクシャクシャ丸めながら言う

 

別に言わなくてもいつかは気づくだろう

 

「・・・眠い」

 

「話が噛み合ってないぞ」

 

『ポン』っと俺の頭を叩く

 

流石櫟、見事な突っ込みだ。

 

いつも雅に突っ込んでいるだけある

 

「・・・保健室」

 

呟いてしまった一言

 

『バン!』っと頭を叩かれる

 

『眠い』まではOKだが、

 

『保健室』や『帰りたい』を言ってしまうと本気で殴られる

 

平手だから良いものの、いつか拳になるんじゃないかと怯えている

 

「・・・・・・痛いな、ものすごく、」

 

殴られた頭をわざとらしく撫でながら言う

 

すると櫟は血相変えながら拳を握り締めて言う

 

「何だ?そのやる気のない応答は?

 

何ならもっと殴ってやっても良いんだぞ?あ?

 

俺はお前の事を思って色々してやってんのによ!なんだよ!

 

感謝もしないでフラフラしやがって!!バーカ

 

そうだよ!!バーカバーカ!!馬鹿氷牙〜

 

や〜い、悔しかったら此処までおいで〜」

 

「いや。別に悔しくないな」

 

廊下まで出て行った櫟呆れた・・・、いや、汚らしいものを見るかのように見る

 

「・・・・・お前は恥ずかしくないのか?

 

イキナリ大声をあげて廊下まで走り去る。何がしたいのか全くわからない」

 

弁当箱をバックに詰めながら櫟に問い掛ける

 

『ブチ』っと何かが切れる音がした

 

「氷牙・・・・・、テメーいっぺんぶっ殺す!!」

 

櫟はこちらに走り寄ってきて、勢いに乗って俺を投げ飛ばす

 

クルリと宙で2回転をして別に格好をつけるわけでもなく着地する

 

「・・・・・待て、争う事に何の意味もない。

 

それ以前に何のために争っているかも分からん」

 

そう言うとますます血相を変えて俺に殴りかかってくる

 

顔面をパンチしてきたので、かわして腕を掴んで投げて床に叩きつける

 

起き上がろうとしたので首に黒板指しを突きつける

 

「・・・落ち着け、暴力では何も解決しない」

 

「とか言ってしっかり反撃してんじゃねー!!」

 

もっともな事を言われたが別に何をしようとも思わない

 

黒板指しを元に戻し、櫟に手を貸してやる

 

「畜生。暴力じゃあお前に勝てない・・・」

 

俺の手を使って起き上がりながら言う櫟

 

勉強もコイツよりは勝っているんだがな・・・

 

「・・・なぁ、そろそろ手を離してくれないか?」

 

櫟は立ち上がった今でも俺の手を離さない

 

なんか汗ばんでるぞ

 

「いいじゃないか。なかよしこよしで」

 

笑いながらより一層強く握ってくる

 

正直痛い

 

「よっ。仲がいいな」

 

もうチャイムが鳴ると言うのに今ごろ来る雅

 

櫟が睨みつける

 

「今ごろ何のようだ?帰れ」

 

きつい事を言う櫟に対し笑って誤魔化す雅

 

俺は別に来ても来なく良かったので無表情だ

 

「あはははは、悪かったって、坂井も居ないんだから別にいいだろうが」

 

あくまでも笑って誤魔化そうとする

 

「馬鹿が、昼休みは俺ら4人の神聖な儀式みたいなもんだろうが

 

坂井は生徒会だから仕方ないがお前は違うだろ!!」

 

四人・・・・、櫟、坂井、雅。

 

最後は誰だろうな・・・・・

 

「まずどこで何をやってたか言え」

 

櫟は徹底的に雅を追い詰める気だ

 

こいつはあまり敵にまわしたくないかもな

 

いや、敵が居ないのが一番だろう

 

「言ってもいいのか?本当に後悔しないか?」

 

雅は何度も追及してくる

 

何かあるのだろうか?

 

この追及に櫟は少し動揺しながら

 

「お、おう」

 

と答える

 

雅は『ふぅ』と息を吐き言葉を発する

 

「戸谷に呼び出された。もちろん理由は体育祭委員の事だ」

 

俺を横目で見る2人

 

目をそむけて聞いていない振りをする

 

「それでな、戸谷にがどうしても俺らに委員をやってくれって言うんだ」

 

少し大きな声を出す雅、俺にわざと聞かせようとしているようだ

 

「それで俺は覚悟を決めた。氷がやらないなら俺達はやらないと」

 

「「ちょっと待て」」

 

見事に重なった俺と櫟の声

 

一度顔を見合わせてすぐに視線を雅に戻す

 

「なぁ、今俺達って言ったよな?」

 

「それは俺へのプレッシャーか?」

 

ほぼ同時に言った俺と櫟に雅は笑顔で

 

「両方正解だな」

 

と言った

 

キーンコーンカーンコーン♪

 

本気で櫟がキレそうになったところをちょうどよく

 

チャイムが鳴った・・・