本当に嫌になる

 

昼休みが終わったあと授業中にも関わらずに

 

雅達3人は俺の周りでずっと『体育祭委員、体育祭委員』と呟いていた

 

それに大して何にも言わない先生に生徒達

 

これは絶対いじめだ

 

下校のチャイムが鳴ったと同時にHRもせずに逃げ出した

 

グランウンドで元気よく走り回るサッカー部

 

・・・・・そういえば俺は部活に入っていたんだった

 

戸谷が顧問の新聞部に・・・。なんと部員は俺を含めて3人だけ、

 

俺と3年の相沢(♀)さんと1年の愛川(♂)の3人

 

確か愛川は俺のクラスに姉が居たはずだ

 

部活には入りたくなかったのだがこの学校はかならず部活に入らなければならないから

 

仕方なく戸谷の部活に入った

 

なぜかたまには顔を出そうかな、なんていう気分になり

 

正式に体育祭の件を断るついでに部活に顔を出すことにした

 

部室は第3校舎の最上階の突き当たりにある

 

いつも通りのんびり歩きながらその部室まで直行

 

部室の戸を開けると紙やらインクやら何やらが散乱している

 

言うに汚い

 

「汚いね」

 

突如聞こえた後ろからの声

 

見ると平然と坂井が立っていた

 

「・・・ストーカー」

 

「人聞きの悪いこといわないでよ、ただのストーキングだよ」

 

何が違うのかまったく分からないが発言を訂正する坂井

 

俺の後をつけてきたのはあっているらしい

 

部室に足を踏み入れ部員や先生を探す

 

奥に見えるは愛川、こっちに気づくなり目を輝かせながらこっちに走ってくる

 

そして俺に飛びつきながら

 

「お久しぶりです先輩〜〜〜〜!!」

 

と叫んでいる

 

でも俺は見事に愛川の頭がミゾオチに入りそれどころではない

 

愛川はどこか幼さが残る顔立ちでかわいい少年だ、背も俺の胸くらいだ

 

何がどうなんだか知らんがどこかで俺とあったことがあるみたく

 

入学式で俺に『氷兄さん!また会えました〜!!』と飛びついてきた

 

それからはもう『氷兄さん』とは言ってないがやたら俺を見るなり甘えてくる少年だ

 

コレが少女ならばまだ少しは許せるが、少年だからな・・・・

 

姉は正反対で学級委員長を務める真面目な人だ

 

「・・・ど、退いてくれ」

 

苦痛に顔をゆがませながらかすれた声で精一杯のお願いをする

 

「・・・♪」

 

無言で俺の胸あたりに顔をすり寄せる愛川

 

どうやら全く退く気は無いらしい

 

仕方なくすこし落ち着いたら愛川を引きずりながらもっと奥へ進む

 

床の紙がクシャクシャ音を立てているのが気になる

 

やっと戸谷が見えてきた

 

・・・・・・・・やる気あんのかなこのオッサン

 

すぐ隣まで来ているのに気づかずニヤニヤしながら携帯電話をいじっている

 

「・・・・・校長先生」

 

俺がそう言うとバッと携帯電話を隠し、思いっきり立ち上がり背筋を張って動かなくなる

 

「・・・嘘」

 

「喧嘩売ってんのかこのボケが」

 

即座に俺の首元のシャツにつかみかかってゆっくりと怒りのこもった声を発する

 

顔をそらしながら手を振り解く

 

「・・・ヤル気あんのかこの中年馬鹿親父」

 

相変わらず顔をそらしながらシャツを整える

 

メールの相手は最近付き合っているという香ちゃんと言う人だろう

 

勤務中に何をやっているのやら

 

「あれ?何だお前か」

 

俺の顔を確認するなりキョトンとした顔になり、また携帯電話をいじる

 

俺なら別に何したっていいのか?

 

「・・・新聞部の顧問でしょう?なにかやることないんですか・・・」

 

下に落ちている紙を拾いながら問いかける

 

携帯電話をいじりながらニヤけ顔で返事が返ってくる

 

「部活に来ていないお前に言われたくないな。

 

それに俺のやることは素材の調達や新聞を貼るスペースの確保だけだ」

 

・・・・・・・・・本当にそれだけなのか?

 

もっと何かあるだろうが、たとえば・・・・・・・・たとえば・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

いや、先生の言うことは素直に信じることにしよう

 

そういえば相沢さんの姿が見えない

 

愛川はたまに見かけるが、相沢さんはまだ1度しか会っていない

 

「・・・相沢さんはどうしたんですか?」

 

頼りないが一様信用できる戸谷先生に聞いてみてやる

 

「知らん。」

 

・・・・・・・・・・やっぱりだめだなこの人

 

「相沢先輩ならここ最近来てませんよ」

 

そういえばまだ俺の腹にくっついたままの愛川が答えてくれる

 

甘えたりふざけたりする天然ボケの愛川だが根はしっかり者だ

 

「どうしたんでしょうかね?

 

あはは、きっとマフィアの基地でも見つけたんでしょうね♪」

 

訂正、コイツは天然ボケの甘えん坊将軍だ

 

一度会ったときに相沢さんには良くしてもらった覚えがある

 

やさしいがしっかり者で人をおちょくるのが好きないい先輩だ

 

部活をサボる人じゃない、夢は新聞記者とまで言っている人だった

 

何かあったのだろうか?

 

そういえば坂井の声が聞こえない。

 

後ろを見ると愛川たちが製作しただろう新聞を読んでいた

 

部活に顔を出して見たものの何にもならないので帰ることにする

 

「・・・愛川。帰るから離れろ」

 

「俺も一緒に帰ります♪」

 

俺から離れたと思ったら即座にバックを持ってきて俺の隣に立つ

 

はぁ、ホントに何が目的なんだか・・・

 

部活はやらなくてもいいものなのかも心配だ

 

・・・今度すこしネタを集めてやるか

 

坂井に目をやると新聞にとりいっている

 

邪魔をすると五月蝿いので無言で帰ることにする

 

本当に無言で部屋を出て、靴箱に向かう